【事例4】間違った相続対策では、資産を失う可能性も・・・名義預金の危険性

相続コンサルタントの井原です。

中流家庭のソウゾク事情【事例4】のご紹介です。

 

【事例4】

亡くなった方:父

法定相続人:1人(子)

主な相続財産・・・自宅、現金

その他・・・父と同居。小規模宅地特例適用のため相続税は無し。

       相続人には自身の子はおらず。配偶者には兄弟がいる。

コンサルタントの初見】

最初のご相談の段階では、相続人は1名だけのため、遺産分割協議の必要が無く、相続による不動産の名義変更手続きのみを希望されていました。

名義変更手続きはスムーズに行え特に問題はないのですが、さらに詳細なお話を伺っていると、2次相続(今回の相続人の方が亡くなった場合の相続)について、対策が必要であることが判明しました。

【ご相談の状況】

相続人(以後Aさん)には、子はおらず、奥様と二人暮らしとのことです。Aさんは元々会社経営をされており、資産をお持ちだそうですが、その一部(現金)をAさんの奥様名義の口座に移しておられ、資産を分散させることによって相続税の節税を行っているとおっしゃっています。

このように、配偶者の方名義の預金口座に現金を移動し、相続税を減らそうとお考えの方がおられますが、これは「名義預金」と言われ、現金は奥様のものにはなりません。あくまで奥様が自由に使える状態にあって初めて奥様のものとなりますが、そうすると今度はAさんから奥様への贈与となり、贈与税が発生してしまいます。

更に、Aさんが先に亡くなった場合は奥様のみが相続人となりますが、その逆で奥様が先に亡くなってしまった場合には、Aさんのみならず、奥様の兄弟も相続人となります。

従って、折角奥様に移動した資金にもかかわらず、奥様の兄弟と遺産分割協議を行わなければならないことになります。

そこで、私からご提案した相続対策は次の通りです。

①奥様への名義預金はやめる。(配偶者が相続した場合の相続税は、配偶者控除を使えば、相続財産が1億6千万円までは負担が無い。)

②奥様に全財産をAさんに相続させる旨の遺言を書いてもらう。(万一先に奥様が亡くなった場合、奥様名義の相続財産の全てをAさんに相続させるため)

※Aさんには兄弟がいないので、Aさんが先に亡くなった場合は相続人は奥様のみのため遺言は不要。

コンサルタントの感想】

今回のご相談のケースは、「名義預金」がポイントとなりました。配偶者名義の預金にうつしたとしても、税務署は資金の流れをチェックし、元は夫のものであったことなど容易に確認できます。

相続資産隠しにより税務調査が入った方が、更に財産が発覚したため追徴課税を受ける割合は9割にも上ります。

そのため、しっかりと裏付けのある相続対策をとっておかないと、何の効果もない絵に描いた餅になってしまいます。

それと、「遺言」についても、子がいない夫婦の場合はやはり残しておくことが必要です。

どちらか一方が亡くなった場合、普段関わりのない兄弟と話し合いを行わなければならないのは相当の負担となるでしょう。最悪、折角築いてきた財産の一部を渡さなければならないという事態にもなりかねません。

晩婚化により子がいない夫婦も増えてきています。そのような方は是非生涯のパートナへの愛情を、「遺言」という形で示してあげていただきたいと思います。 


130607損したくない方向け相続セミナー 司法書士井原哲也 - YouTube