【事例1】夫名義の不動産、妻と子でどう分ける?【2次相続を視野に入れた節税】VS【生活資金の確保】

相続コンサルタントの井原です。

中流家庭のソウゾク事情【事例1】のご紹介です。

 

【事例1】

亡くなった方:夫

法定相続人:妻、子1人

主な相続財産・・・自宅(神奈川県○市)、現金(不明)

 

コンサルタントの初見】

ご相談時のお話によると、ご自宅の名義は夫と妻が各2分の1で、亡き夫名義の2分の1をどのように分けようかというご相談でした。

相続税基礎控除の範囲内(7000万円)であり、発生しないため、どのように分けても特に問題はないが、2次相続(将来の妻の相続)のことを考えて、もし基礎控除(H27~であれば3600万円)を超えるようであれば子へ移すことも検討したほうがよいと思われる事案です。

 

【ご相談の状況】

妻と子の間でまだ十分な話し合いが行われていない段階で、どのように分けるのがベストな選択なのかが不明なご様子。「とにかく一番いい方法を教えてほしい」という事でしたので、将来の妻の相続を視野に入れ、以下をご家族で話し合うようにアドバイスさせていただきました。

 

〇妻の今後の生活を賄うだけの資金(現金)があるのか

・もし十分にあるのであれば、相続税を減らすために、夫名義分は子へ移してもよいでしょう。

・不足する可能性があるならば、将来の施設入居費用や介護費の支出の為に、夫名義を妻へ移しておき、自宅を売却することで資金を捻出する事を視野に入れておきます。(子へ自宅名義を移しておいて、売却後の資金を親の為に使用すると、親子であっても贈与を疑われる可能性あり。)

〇親子での十分な話し合いを持つ機会を作る

往々にして、親の財産状況は子供にはわからないものです。

親が亡くなって初めて、自宅以外に保有する不動産の存在や、予想以上に多い(もしくは少ない)現金に驚く方は少なくありません。

ご相談者のケースでは、妻がある程度資産をお持ちであれば、2次相続での相続税を減らすために子へ名義を移すほうがよいものの、子の側からすると、妻が現状でどの程度の資産をお持ちなのかがわからないので話し合いのしようが無いとおっしゃいます。妻側も子へ打ち明けにくい気持ちはあるようで、お金の話はたとえ親子といっても触れにくいテーマ。親子であっても、ある意味では「他人」でもあり、触れて欲しくないとのお気持ちが見え隠れします。

 

コンサルタントの感想】

2次相続では、相続人が子1人であり、紛争の可能性はほぼ無いでしょう。一方で、奥様の今後の生活や、万一お亡くなりになった際など、あらゆる場面で今後子のサポートが必要になってくるかと思います。

そうした事を考えると、親子の関係性を良好に保つことが最優先であり、税金対策を考える事も大事ですが、まずはしっかりと話し合いを持っていただきたいと思います。

また、どうしても奥様側から、財産を開示することに抵抗があるということでしたら、少なくとも「財産リスト」を作成しておいて、どのような財産(負債含め)がどこにあるのかを明らかにしておくことで、残された子の手間を少しでも減らしてあげていただきたいものです。

不動産の名義変更は、いつまでにしなければならないという期限はありませんので、将来のことをしっかりと話し合って頂ければと思います。